logo logo_atte 日記 随筆 何処
2020-05-16 10:40:48 JST
(2020-05-13) 熊野川紀行(源流編2)。山上ヶ岳から大普賢岳。先の考察の通り、熊野川の起点と言えるのは山上ヶ岳である。山頂の大峯山寺は役小角以来1300年の歴史を持ち、修験道の根本道場として行者達の信仰の地であり第一の霊場でもある。今回の旅の最初の目的地として誠に相応しい。 5時起床。実際には寒くて3時くらいから寝袋で震えていた。朝食はクリームスパゲティ。茹でてレトルトのクリームシチューを混ぜるだけ。 6時半出発、7時半に清浄大橋。ここから800メートルの高度上昇。途中一度休憩を挟んで二時間の登り。道中茶屋が多く、普段なら賑わう参詣路であろうが時節柄誰もいない。おそらく周囲数キロは誰もいない山中である。なんでもない鎖場であるが、絶対に事故れないと思うとやはり緊張する。大峯山寺も参詣停止中。無人の伽藍に石碑が立ち並び、不動明王は虚空を睨む。初夏の眩しい光の中、境内は異様な霊気を孕んでいる。白昼であるがゆえに怖さが引き立つ。三度視界の端に人影を感じ、目を向けると石灯籠に隠れた。非日常が心象に投影する幻影であろう、、、が、単に寝不足による錯覚かもしれない。山頂に立つ。西北に伸びる谷は山上川となり、南からJの字を書く谷は川迫川となる。この2つの大渓谷が熊野川の源流である。広潤な谷も素晴らしいが、見渡す大峰山脈は別格だ。南西に荒々しい稲村ヶ岳の山嶺、その向こうには台地状でどっしりとした弥山が控える。 10時前、大普賢岳を目指し奥駈道を進む。往復のコースタイムは5時間半。4時間で達成できれば夕暮れ前に下山可能だ。とりあえず12時までに行けるところまで行って、時間切れなら引き返すことにする。大普賢岳には行かねばならぬ訳がある。地図で確認する限り、川迫川の一部支流が大普賢岳と稲村ヶ岳の方に伸びており、熊野川最長の源流がこの2つの山に発している可能性がある。片手落ちとならぬようこれら二峰もしっかりと踏みしめておきたい。予定通り二時間弱で大普賢岳に到着。東方にも広く視界が開けているため大台ケ原までがよく見渡せる。道標によると弥山まで10キロ。キャンプ地の洞川までは15キロ。引き返すのがなんだか惜しいが仕方がない。疲れも大分と足に来ている。山上ヶ岳に戻ってレンゲ辻からレンゲ坂谷を下る。山上川はこの谷から始まるため、ここでの水源を見ておけば、熊野川を源流から辿ったと言ってもよいだろう。ガレた沢筋は岩壁に挟まれ落石が怖い。細心の注意を払って急いで通過する。涸れ谷が湿ってきた頃、大きな岩の下から雫が落ちているのを発見。うむ、満足。熊野川の始まりを確認できた。後は川沿いにキャンプ地まで戻るだけ。まぁ、季節や雨の状況によっては水源は移動するでしょう。本当は川迫川の水源も辿りたいが登山道がついていないのではやむなし。キャンプ地に戻ると管理人が豆ごはんに佃煮、牛肉と山菜の煮付けをごちそうしてくれた。あぁー、めちゃくちゃうまいわぁ。本日は30キロを歩いてクタクタ。風呂を沸かしてもらい、毛布の貸出を受けて、日の入り前には寝袋へ。